高所登山に関する知識は、登頂への助けになるはずです。
キリマンジャロに登るにあたり、何に気を付ければいいのでしょう。
今回は高所登山がなぜ難しいのか、簡単に説明したいと思います。
キリマンジャロのような5000mを超える高所登山は、日本国内での登山では体験することができない“”異常な状態“”での登山である、と認識しておいてください。
何が異常なのでしょうか。大きく分けて4つあります。
① 低酸素
まず誰でも最初に思いつくのがこの低酸素、だと思います。標高が上がれば空気が薄くなり、酸素も減ります。それに合わせて酸素と結びついた血中のヘモグロビンも減り、人体に様々な障害をもたらします。これが急性高山病です。高度を上げて行けば血中の酸素濃度が低下していきますが、標高の上げ方によっても違ってきますし、個人差(もともとの呼吸機能や順化の違い)もあります。また、高齢者の方が低酸素状態に陥りやすいというデータもありますが、個人的に見てきた限りでは若い人の方が重症になるケースが多かったようにも思います。
過剰に心配する必要はありませんが、ゆっくり歩く、体を冷やさない、水分を十分にとる等、常識的な高山病対策は各自で気を付けていただく必要があります。
高山病対策に関しては「高山病の概念と基本的な対策」を参考にしてください。
② 寒さ
152m登ると気温はおよそ1℃低下します。登山口から頂上までの標高差はおよそ4000mですが、この計算だとおよそ26℃低下することになります。これに加え昼夜の気温差も加わります。キリマンジャロのキャンプ地では、赤道直下とはいえ0℃前後まで冷え込みます。
頂上付近ではマイナス10度まで下がります。体温が奪われると全身の生化学反応が落ち、また寒冷に伴う利尿による循環血液量も低下し、急性高山病にもつながります。
防寒対策と水分補給はしっかりしておかなくてはなりません。
③ 乾燥
高所の空気は常に乾いています。そして高所では誰もが呼吸が大きく早くなります。日本登山医学会によると、標高5500mでの軽い運動でも呼吸によって肺から失われる水分は1時間あたり200mlと推定されています。
キリマンジャロでの頂上アタックですが、4700m~5895mまでをおよそ7時間かけて登り、3時間で下山します。この10時間で体から失われる水分はおよそ2リットルと予想できます。頂上アタック時は寒いのでなかなか水分を取りづらいものです。軽量化のため、行動中は500mlしか水を携帯しない方もいますが、急激な水分喪失による脱水は血液を濃縮させ固まりやすくし、大変危険な状態と言えます。
キリマンジャロでは最低1日3~4リットルの水分補給が必要であると認識しておいてください。行動中はもちろん、キャンプ地でたくさん温かいお茶等水分補給しましょう。
④ 紫外線
空気が薄いことと、空気が乾燥している(空気中の水分が少ない)ことは、いずれも太陽光線の空気中での散乱を減らします。晴れたキリマンジャロの頂上では、海抜0mに比べて人体に吸収される日射量は50%増加というデータがあります。地表面での反射も大きな要素であり、通常の地表面での反射は20%に満たない程度ですが、積雪がある場合の反射率は90%に達することもあります。帽子、サングラス、日焼け止めは必携であると思っていてください。
日焼けに関してですが、女性はかなり気をつけていますが、男性は甘く見ている傾向にあります。鼻の皮が全部剥げたり、唇が割れて血だらけになった人もいますので、甘くみないようにしてください。
これら高所登山の特徴を理解しておくと、高山病対策に関してもより理解が深まると思います。参考にしてください。