急性高山病(AMS)と高所順応

登山仲間で国際山岳医の市川先生の高山病に関するブログの要点をまとめました。
オリジナルの記事は一番下にURLを添付しておきますので、より深く理解したい人は是非そちらを参照してください。

高所順応と高山病(AMS)の要点まとめ

登山医学の知見に基づいた、安全に高所に登るためのガイドです。

1. 高所順応のメカニズムと誤解

  • 高度順応とは: 低酸素環境に体を慣らす生理的な適応反応。数分で始まる心拍数増加から、数日かかる腎臓の調整、数週間かかる赤血球の増加まで段階がある。

  • 体力との関係: 「体力(心肺機能)がある = 高所に強い」ではない。 アスリートでも高山病になる。ただし、体力があれば「余裕を持って登れる」ため、間接的には有利。

  • 個人差: 年齢や性別より「体質」が大きく影響する。過去に高山病になった人は再発しやすい。

2. 急性高山病(AMS)の症状と見極め

  • 主な症状: 頭痛(ほぼ必発)、吐き気・食欲不振、疲労感、めまい。

  • 重症の兆候: 以下の症状が出たら直ちに下山・救助要請が必要。

    • 高地脳浮腫(HACE): まっすぐ歩けない(運動失調)、性格が変わる、意識がぼんやりする。

    • 高地肺水腫(HAPE): 著しいペースダウン、安静時の息切れ、血痰。

  • 水分の誤解: 「脱水で高山病になる」という直接の証拠はないが、脱水の症状は高山病と似ていて紛らわしいため、適度な水分補給は重要。

3. 具体的な順応戦略(予防法)

もっとも重要なのは**「ゆっくり登ること」**です。

基本ルール

  1. 睡眠高度を意識: 高度順応には「どの高さで寝るか」が重要。

  2. 1日の上昇制限: 標高3,000mを超えたら、寝る場所の高度を前日より500m以内に抑える。

  3. 休養日の挿入: 1,000m登るごとに休養日(同じ高さで2泊)を入れるのが理想。

事前順応とリマインド効果

  • 持続期間: 順応効果は平地に戻ると1週間〜数週間で消失する。

  • リマインド効果: 一度順応して効果が消えても、直近(2週間〜2ヶ月以内)に高所経験があると、次の登山で順応が早まる。

  • 低酸素室の活用: 事前順応としての効果は限定的だが、「高所での呼吸法(口すぼめ呼吸など)」を練習する場所として非常に有効。

4. もし症状が出たら

  • 高度を上げない: 軽い症状ならその場に留まって様子を見る(順応を待つ)。

  • 改善しなければ下がる: 症状が改善しない、あるいは悪化する場合は**「高度を下げる」**のが唯一かつ最大の治療。

  • 目的地についてもすぐ寝ない: 到着直後に寝てしまうと呼吸が浅くなり、酸素飽和度が下がって発症しやすくなる。1〜2時間は起きて過ごすのが望ましい。

出典:登山×医療ブログ

● 登山×医療ブログ】急性高山病(AMS)の正しい予防と対処法|山岳医が最新知見で解説

https://tozan-medical.com/ams/

 

● 前編|高度順応とは?:何日で効果が出る?体力があればカバーできる?

https://tozan-medical.com/altitude_acclimatization_1/

● 後編|高度順応はどのくらい持続する?登山前にできる事前順応・低酸素室を解説

https://tozan-medical.com/altitude_acclimatization_2/