沢から甲斐駒ヶ岳、尾白川本谷、2023/7/29~30

個人的な参考記録です。
山梨県白州、尾白川渓谷から尾白川本谷をつめて1泊2日で甲斐駒ヶ岳に登ってきました。
今回のメンバーは昔からの山仲間の石ちゃんと、最近よく一緒に登るようになった国際山岳医の市川さん、そして私の3人です。
キリマンジャロ渡航の際は、もし長野県が近いようならぜひ市川さんのとこの登山者検診をご活用ください ⇒ 松本協立病院 登山者検診 「https://www.chushin-miniren.gr.jp/consult/checkup/climber

さて、今回のルートは以下のマップのとおり。
車が2台あるので、1台は尾白川渓谷の駐車場にデポ、もう1台で日向山側の駐車場まで行ってスタートしました。5時20分くらいにつきましたが、続々と車が登ってきて、もう少し遅かったら停めるスペースが無かったかもしれません。

入渓点までは林道を歩いて1時間半くらいです。
途中トンネルが3つあります。
崩落個所があったりもしますが、大したことはありません。
林道終点にはピンクテープがありますが、行き止まりになるのですぐに分かります。
谷側にフィックスロープがしっかり張ってあるので、ロープ沿いに下りていけば簡単に沢まで下りられます。

詳しくは動画の方が分かりやすいと思うので以下のリンクから youtube に飛んでください。
1日目 : https://www.youtube.com/watch?v=z8SXETpvpbY&t=615s
2日目 : https://www.youtube.com/watch?v=0HGXpP7f5s4

というわけで、こちらではポイントを絞って記載します。

① 滝の横のスラブ登攀
入渓してから最初の方に出てくる滝です。

滝の左側のスラブを登ります。
いかにも滑りそうですが、沢慣れた人たちなら問題なく通過できます。
フェルトソールでも、ラバーソールでも問題ありません。
下部は傾斜がユルイのでスタスタ行けます。上部は傾斜が少しきつくなり滑る感じが出てきますが、良く足元を見てもらうとアンダーが取れる箇所がいくつもあるので、アンダーを取って体を斜面に押し付ければしっかりフリクション効きます。

② 巨大チョックストーンの入り口

このチョックストーンの入り口左側に細い滝があり、右側はびっくりするぐらいボロボロ崩れてくる壁になっています。
左の滝沿いに登って右にトラバースする人が多いようなのですが、びしょびしょになる&右にトラバースがすごく狭そうな感じに見えたので、試しに右のボロボロの岩をチョイスしてみました。

びっくりするぐらい触る石がはがれるので、スタンスだけ気を付けて、ホールドは触ってバランスをとるだけにします。岩が安定していれば何てことない岩場です。
そーっと、そーっと、足でスタンスを確認しながらトラバースします。


足場をしっかり選んでいけば問題なく通過できる感じでした。
でも落石がきそうな感じのエリアなので、早めの通過がよろしいかと思います。



トンネルをくぐって出たところにビバーク地として人気らしい岩小屋がすぐにあります。

③ ビバーク候補地
ビバーク適地は結論から言うと4か所ありました。
すべて巨大チョックストーンを過ぎた後、標高2000m~2050mくらいの間にあります。
一番最初にでてくるのは巨大チョックストーンの出口すぐにある岩小屋です。
下の写真です。
確かにツェルトを張る必要もなく泊まれそうですが、広くはないです。
写真には写っていませんが、虫が多かったです(秋ならいないかも)。
景色は良くありません。水場はこの岩場の裏で、この岩を高巻いて裏に回らなければならないため面倒です。以上の理由により、ここはパスしました。


下の写真ですが、この岩小屋の裏側の沢沿いに2人くらいなら快適に泊まれそうな砂浜状の場所がありました。焚火跡もありここに泊まる人も多いのかなと思いました。
下界も見えて眺め良好、水場目の前、とてもよさそうでした。
薪の残りが置いてあってここに決めようか迷いましたが、若干狭いということで我々はパス。



次の大岩の滝を高巻くと次のビバーク適地がでてきます。
今回はここにしました。




ここは6人くらいいても何とかなりそうなくらい余裕のあるスペースでした。
水場も目の前で、景色も良く、薪も豊富で即決でした。

あとは写真は残っていませんがこのビバーク地のすぐ上に芝生っぽい地面の快適そうなビバーク適地がもう一つありました。沢も遠くなく選択肢としては有りな感じでした。


④ 30m大滝 
2日目、ビバーク地を出発して10分くらいで見えてくる大滝登攀がこの日の核心です。
実際に登るのは滝の右側の凹角状の傾斜のきついスラブです。
見た目は大したことない、写真でみるともっと大したことない、でも実際に取り付いてみると右壁のボロボロ具合にゲゲってなります(笑)

上の写真をみると分かりますが、右壁が白っぽくて、左側は茶色っぽい壁です。
右側の白っぽい壁は風化が進んでボロボロの石灰岩です。触るとこ触るとこがいちいちボロボロと崩れてきます。カムを入れられる場所がところどころあるので3か所にセットしましたが(キャメ1、リンクカム1、リンクカム0.75)テンションかかれば岩がボロっと削れて外れる可能性が高く、気休め程度と考えてください。
左の壁はしっかりしていて、フリクションも悪くないですが手がかりは少な目です。ピトンが一か所打ってあり古い残地スリングが垂れています。とりあえずこちらにある程度信頼のできそうなランニングが1か所とれます。
中盤は右側にえぐれていて大きめのスタンスがあるのでそこに右足を突っ込んで落ち着けます。
このまま凹角を上まで抜けてもいいですが、後半の左側のテラスに乗り移れます。
そこのテラスでセカンドのビレイをします。30mロープで丁度良いくらいの距離です。

後ろの足元にピトンを打ち込んでセルフをとりましたが、やはり岩がもろいので、テンション掛ける方向によっては抜けやすく、そこら辺を考慮して打つ場所を決めます。ハンマーで打ち込むととりあえずボロっと一回岩が剝がれるので、それを取り除いてからさらに深く刺さるように打ち込みました。これである程度安定。肩絡みでビレイします。


上からみるとこんな感じでセカンドが登ってきます。
30mロープで数メートル余るくらいなので、そこそこ高度感あります。
ランニングが信用できないことと、壁が不安定なことで、
経験の浅いメンバーはリードしない方が無難だと思いました。


凹角の部分が終わるとさらに上にもう少しだけスラブが続きます。
簡単そうだったのですが、万が一落ちたら下まで行っちゃうので、念のためロープを引いて抜けましたが、フリクションバッチリでロープ無しでも大丈夫そうでした。
これで大滝登攀は終了です。


この沢のポイントはこれくらいでしょうか。
全体的にはとてもキレイな沢で美しい南アルプスを堪能できました。
写真を適当に下に張り付けておきますね。
動画を見ていただけると一番参考になるかと思いますので、興味のある人は上の方に張り付けてあるリンクからyoutubeに飛んでください。

























甲斐駒ヶ岳登頂後、黒戸尾根から下山。
1日目 コースタイム10時間
2日目 コースタイム10時間半

ビバーク地から稜線までは3時間、30分休憩、甲斐駒ヶ岳の頂上まで1時間半。
下山は5時間半ほど。
大滝登攀後は概ね左岸側に巻き道あり。
最後のツメは左寄りで樹林帯に入っていくと踏みあとが出てきます。甲斐駒ヶ岳が左なので、我々は左寄りにツメましたが、日向山方面から下山を考えているひとは右寄りにツメればいいかと思います。

以上